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コラム
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは? 作る時、社内浸透させる時のポイントや 主な企業の具体例
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)という言葉をご存知でしょうか。
MVVは、会社が企業活動を通じてどのようなことを成し遂げようとしているのか、将来どのような姿を目指すのか、大事にしている価値は何なのかを言語化したものです。
社員が同じ方向を向き、企業が持続的に成長していくために欠かせない、企業にとって根幹となる大切な要素の一つと言えるでしょう。
このコラムでは、ミッション・ビジョン・バリューについて、その役割や意味するところ、そして策定や浸透の方法などについて、わかりやすく解説します。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?
MVVとは、Mission(ミッション)、Vision(ビジョン)、Value(バリュー)、それぞれの頭文字をとった造語です。まず最初に、ミッション・ビジョン・バリューそれぞれの意味について説明します。
CONTENTS
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- 1.Misson(ミッション)
- 2.Vision(ビジョン)
- 3.Value(バリュー)
- 4.ミッション・ビジョン・バリューは、よく「山登り」に例えられます。
Misson(ミッション)
ミッションは、まさに言葉のとおり、その企業の「使命」といえます。企業はそれぞれ商品やサービスを提供し、対価を得て利益を生み出している組織です。何のためにその商品やサービスを世の中に提供しているのか、何を目的としているのか、自分たちの存在意義、社会において果たすべき役割を言語化したものが、ミッションです。
Vision(ビジョン)
ビジョンは、将来こうありたいという、目指す理想像です。企業がミッションを達成した結果として実現するであろう、将来の社会のありようや、組織としての自分たちの姿を具体的に描き言語化したものとも言えます。
Value(バリュー)
バリューは、その企業がどのような価値観を大切にしているのかを明確にし、日々の業務でどのように行動するかを明文化したものです。例えば、チームワークを大切にする、プロとしてクオリティにこだわる、スピードを重視する、テクノロジーを活用する…など、どのような行動を求めるかは、企業によって異なりますが、それぞれの企業で社員が業務を遂行する上で必要となる、行動指針ともいえます。
ミッション・ビジョン・バリューは、よく「山登り」に例えられます。
ミッションは山に登る理由、なぜ目的地を目指すのか。
ビジョンは登るべき山はどこか、到達した頂上の風景。
ビジョンは山の登り方、どのようにどのルートで登るのか。
しっかりとしたミッション・ビジョン・バリューを作ることは、企業が何のためにどこを目指してどのように進むのかを明確にすることでもあります。
それぞれの意味をしっかりと押さえて、自分たちの企業にあったミッション・ビジョン・バリューを設定することが求められます。
MVVを作るメリットとは
企業が活動し、持続的な成長を続けるために欠かせないミッション・ビジョン・バリューですが、具体的に、MVVを作ると企業にとってどのようなプラスが期待できるのでしょうか。以下、主なものをご紹介します。
CONTENTS
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- 1.経営層と社員が同じ方向を向いて仕事に臨める
- 2.判断に迷った時に立ち返る指針となる
- 3.社外に自社の価値観を伝えられる
経営層と社員が同じ方向を向いて仕事に臨める
最も大きなメリットの一つは、ミッション・ビジョン・バリューを作ることで会社が目指すべき方向性を明確にすることで、経営層から社員までの意識を一つにまとめることができる点です。
社員が仕事に求めるものは、給与や福利厚生だけではありません。自分たちの仕事が社会や地域の役にたっている、世の中に貢献できているという実感を得たいと考えている人が増えているとも言われています。ミッション・ビジョン・バリューを示すことで、仕事をする意味、社会に提供できる価値を社員それぞれが理解し、より一層やりがいを持って働ける環境を整えることができるのです。ひいては、社員のエンゲージメントの向上、離職率低下といったプラスの効果も期待ができます。
また、定めたMMVを、目標設定や業務のフィードバックなどにも活用することで、経営層と社員が常に同じ方向を見て、目標に向かって迷いなくすすむことができるようになるでしょう。
判断に迷った時に立ち返る指針となる
ビジネスを続けていると、さまざまな問題に直面します。利益、株主や世間の反応など、いろいろな要素が複雑に絡み合い、常に迷いなく判断できることばかりとは限りません。時には迷ったり、本来取るべきではない選択肢がよぎることがあるかもしれません。
そんなときに、ミッション・ビジョン・バリューがしっかりと定められていれば、自分たちの使命、目指すべき姿に立ち返り、「この選択肢はミッションに背いていないか、この道を選ぶことでビジョンを実現できるのか、この行動はバリューに沿っているのか」と、みんなが共有している判断基準に従って議論をすすめることが可能となります。
また、MMVが浸透していれば、大きな経営判断に限らず、社員の日々の業務にも良い影響をもたらします。現場でも、MMVは迷った際の指標となり、社員が自ら判断し、進む道を正しく選択する手助けとなるはずです。
社外に自社の価値観を伝えられる
ミッション・ビジョン・バリューを制定することで、社内だけではなく、社外にも良い効果をもたらすことが期待できます。
一般的に、企業の顔となる公式サイトや、パンフレット、統合報告書や中期経営計画などの社外向けの資料には、それぞれ企業のMMVが掲載されています。
自分たちが果たすべき使命や目指す姿、大切にしている価値を発信することで、顧客や株主、取引先などのステークホルダーから信頼を得ることが期待できるためです。
また、社外への発信は、採用活動にもプラスに働く可能性があります。業務内容や採用条件だけではなく、MMVを伝えることは、求職者に対して自社の良いイメージを伝えることにつながるでしょう。さらに、MMVに共感して応募をしてきた求職者は、採用におけるミスマッチを防ぎ、モチベーションを維持して働いてくれ可能性が高いことことから、MVVを活用した「共感採用(会社の理念などに共感しているかどうかを重要視する採用手法)」を取り入れている企業もあります。
MVVを作る
今や、企業にとって必須ともいえるミッション・ビジョン・バリューですが、これらはただ作ればよいというものではありません。どのような点に気を付けるべきなのか、MMVを定めるときの主なポイントをみてみましょう。
CONTENTS
- 1.ミッション、ビジョン、バリューのつながりを意識する
- 2.わかりやすく頭に残るフレーズにする
- 3.社会の状況や時代の要請とのズレがないか確認する
- 4.策定の過程に社員を巻き込む
ミッション、ビジョン、バリューのつながりを意識する
MMVは、それぞれが独立して存在しているものではありません。お伝えした「山登り」の例にあるように、それぞれが関係しあって、企業活動をすすめる指針となるものです。
そのため、一つひとつのつながりを意識して、矛盾なく存在できているか関係性を意識して作ることが大切です。代表的な企業のMMVに目を通し、いろいろなパターンの具体的なイメージを参考に議論することも有効です。
わかりやすく頭に残るフレーズにする
ミッション・ビジョン・バリューはできる限りわかりやすく、すぐに覚えられるような頭に残るフレーズにすることをおすすめします。例えば、自社の事業すべてに言及しようとして文章量が多くなってしまったり、形式にこだわって格式ばった言葉遣いになってしまったりすると、社内外に発信しても印象に残らず、浸透させることが難しくなってしまいます。
ぱっと聞いて頭に残る、それでいて言いたいことを端的に表現しているMVVを作るのは簡単ではありません。しかし、言葉選びはMVVの肝となる重要な要素なので、時間をかけてじっくりと練り上げましょう。
社会の状況や時代の要請とのズレがないか確認する
その時代によって、企業に求められる姿、期待される社会貢献の形があり、価値観も変化していきます。例えば、印象的な言葉づかいを意識しすぎるあまり、多様性への配慮が欠けた言葉を使っていたり、働き方改革と逆行するようなバリューがあったりすると、本来言いたいことが伝えられず、場合によっては批判を浴びるリスクもあります。時代の動きにアンテナを張り、確認しながら明文化していきましょう。
また、社会の状況や時代とともに変化する価値観にあわせて、時にはMVVも作り替える必要が出てくるかもしれません。社長交代や創業〇年といった節目にMMVを見直して、時代に合わせて作り変える企業も多くあります。
策定の過程に社員を巻き込む
内容だけではなく、作り方も意識をすることで、より社内に浸透し、意味のあるミッション・ビジョン・バリューとすることができます。
特に、社長単独、もしくは経営層のみで作成すると、上から押し付ける形になってしまい、その後の浸透が難しくなってしまう懸念があります。
可能ならば、決定するまでの過程に、何らかの形で現場の人間を巻き込むことをおすすめします。少し時間はかかってしまうかもしれませんが、その分、社員が「自分たちで作ったMMVだ」と感じ、より意味のあるMMVとすることが期待できます。
MVVをどうやって社内に浸透させるか
せっかく良いミッション・ビジョン・バリューを作ったとしても、それが日々の業務に活かされ、社員の行動に影響しなければ意味がありません。MMVがその価値を発揮できるかどうかは、内容ももちろんですが、むしろその後の浸透具合によって左右されるといっても過言ではありません。
大切なのは、「無理やり覚えさせる」ではなく、トップが先頭に立って常に発信することで、社員一人ひとりの中にMVVのフレーズや意味するところを根付かせていくことです。
そうすることで、社員は日常業務においてもバリューに沿った行動を心がけ、提案や議論の場面でもミッションとズレていないか、ビジョンに向けて進めているかを自ら確認する習慣がついていくはずです。
ここでは、策定したMMVをどのように社員に浸透させるのか、いくつかの実践例をご紹介します。
CONTENTS
- 1.経営層やマネジメントがMVVのフレーズを多用する
- 2.目標設定に紐づける
- 3.ワークショップや研修などの機会を設ける
経営層やマネジメントがMVVのフレーズを多用する
最も重要なポイントの一つは、常日頃から社員全体がMVVの内容を見聞きする機会を増やすことです。
経営層やマネジメントは、社員の意識に自然とフレーズを印象づけるよう、日常的にMVVに言及するようにしましょう。
例として、以下のような実践方法が挙げられます。
→期初の全社会議など社員が集まる場で、トップが必ずミッション・ビジョン・バリューに関連する話をする。
→部署ごとの案件に関するミーティングの議論で「Aの案は〇〇のミッションに沿った内容だといえるかな?」などの問いかけを入れ、部下にMVVとの関連を考えさせる。
→部下との定期的な1on1で、バリューに紐づいた行動・反した行動をフィードバックする。
→お知らせメールなどに、MVVに関する記述を必ず入れ込むようにする。
この他にも、名刺のデザインにMVVのフレーズを入れたり、MVVを記載したカード(クレドカード)を作って入館証と一緒に首から社員が常に下げたり、各企業がさまざまな工夫をしています。
目標設定に紐づける
ミッション・ビジョン・バリューを浸透させるために、クォーターや半期、年度ごとに設定する目標に紐づけるのも一つの手段です。
中でも、目標に落とし込み、客観的な判断基準を作って評価しやすいのは、バリューです。
例えば、「挑戦する姿勢」を重要視するバリューを設定している企業であれば、失敗を恐れずにチャレンジすることを求める目標を立て、評価時にそうした行動ができたかどうかを評価します。具体的な案件や提案にからめた目標を設定したり、広く「バリュー目標」という項目を立てて評価時に社員本人から具体例を申告してもらう形にしたり、やり方は企業によってさまざまです。
目標に紐づけ、バリューに沿って行動している社員を評価することで、バリューが浸透し、会社として求める行動を社員が日頃からとるようになることが期待できます。
ワークショップや研修などの機会を設ける
ミッション・ビジョン・バリューについての理解を促し、より浸透度を高めるために、MVVに関するワークショップや研修を実施している企業もあります。
それらの実践内容は、対象によって異なります。管理職向け、一般社員向け、地方の支店向けなど、それぞれ受講するメンバーの顔触れによって、どのようにMVVを落とし込みバリューを発揮してもらうか、検討する必要があります。
実施するときにポイントとなるのは、まずはゴールをしっかりと設定すること。何のためのワークショップなのか、受講した後に参加者の意識がどうなっていると成功と言えるのかをしっかりと描きましょう。
また、参加者がただ「座って話を聞くだけ」にならないような工夫も必要です。主催者側がMVVの重要性を伝え、理解を求めるだけの内容となってしまうと、時には押しつけと取られてしまいます。それぞれがMVVと自分たちの日々の業務との関係性を考え、MVVについて真の理解を促すことができるような仕掛けを作りましょう。
代表的な企業のMVVをみてみよう
ここまで、ミッション・ビジョン・バリューについてさまざまな観点から解説してきましたが、ここで、代表的な企業が掲げている実際のMVVなどをみてみましょう。
企業によって、若干呼び方が異なっていたり、3つ全てを策定していなかったりするところもありますが、それぞれが企業活動を続ける上で必要な考え方などを明文化し、内外に発信しています。
CONTENTS
- 1.パナソニック
- 2.旭化成グループ
- 3.キリンホールディングス
- 4.ファーストリテイリンググループ
- 5.LINEヤフー
パナソニック
ミッション:Life tech & ideas 人・社会・地球 を 健やかにする。
ビジョン:人を想う技術 と 創造力でくらしを支えるベストパートナー
バリュー:お客様に寄り添い、考え抜きます。くらしと調和する技術を追求します。柔軟な発想で、常にオペレーションを進化させます。
旭化成グループ
グループミッション:私たち旭化成グループは、人々の “いのち”と “くらし”に貢献します。
グループビジョン:「健康で快適な生活」と「環境との共生」を通じて、社会に新たな価値を提供していきます。
グループビジョン:「誠実」誰に対しても誠実であること。「挑戦」果敢に挑戦し、自らも変化し続けること。「創造」結束と融合を通じて、新たな価値を創造すること。
キリンホールディングス
パーパス:キリングループは、「酒類メーカーとしての責任」を果たし、「健康」「コミュニティ」「環境」という社会課題に取り組むことで、こころ豊かな社会を実現し、お客様の幸せな未来に貢献します。
2027年の目指す姿・ビジョン:食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる
“One KIRIN” Values:熱意・誠意・多様性(Passion. Integrity. Diversity.)
ファーストリテイリンググループ
Statement:服を変え、常識を変え、世界を変えていく
Mission:ファーストリテイリンググループは─
本当に良い服、今までにない新しい価値を持つ服を創造し、世界中のあらゆる人々に、良い服を着る喜び、幸せ、満足を提供します
独自の企業活動を通じて人々の暮らしの充実に貢献し、社会との調和ある発展を目指します
Value:お客様の立場に立脚、 革新と挑戦、個の尊重、会社と個人の成長、正しさへのこだわり
LINEヤフー
ミッション:「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。
バリュー:「ユーザーファースト」、「やりぬく」、「少数精鋭」
いかがでしょうか。端的な言葉で、どれも企業活動に紐づけながら存在意義や目指す姿、大切にしている行動指針などをわかりやすく表現しているといえます。
自社のMVVを作成する際、こうした他社の事例を参考にしてみるのも、一つの方法と言えるでしょう。
まとめ
ミッション・ビジョン・バリューは、企業がその存在意義を確認し、成長し続ける上で重要な役割を持つものです。明文化して社内外に発信し、そして社員がその意味することを納得し実践することで、より、大きな力を発揮します。
会社の事業や理念を改めて見つめ直し、社会へのメッセージとなる、そして働く社員が拠り所とできるMVVを作っていきましょう。
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