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コラム
効果を高める「1on1」のやり方は? 実践方法や注意点を解説

部下との1on1(ワン・オン・ワン)を導入したものの、「何を話せばよいかわからない」「形式的になってしまう」と悩む経営者は少なくありません。
また、経営者自身が多忙を極める中で、1on1を「やる意義」を見失ってしまうケースもあります。
しかし、適切に設計された1on1は、部下のモチベーション向上だけでなく、組織文化を変える強力なツールです。
本記事では、経営者が押さえておくべき1on1の目的・実践法・注意点、そして経営者自身が「受ける側」となる意義についても解説します。
1on1とは?

CONTENTS
- 1.部下の成長を支援するための「対話の時間」
- 2.1on1を導入するメリット、期待できる効果とは
部下の成長を支援するための「対話の時間」
1on1(ワン・オン・ワン)とは、上司と部下が1対1で行う定期的な面談のこと。「フィードバック面談」や、期ごとに行われる「評価面談」などとは異なり、特定の決まったテーマはなく、部下の成長やキャリア形成の支援・モチベーションの向上などを目指して行われるのが特徴です。ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」で知られるヤフー株式会社が2012年から導入し、そのノウハウや成果をまとめた書籍を出版したことで日本の企業に広がったと言われています。
1on1に特定の定義や決まったやり方があるわけではありませんが、部下が日々の業務やキャリア、組織に対して感じていることを率直に話し、上司が傾聴・共感・質問を通じてサポートする形が一般的です。
1on1が注目される背景としては、人的資本経営を企業が求められるようになったことや、労働人口の減少で企業存続のために従業員のマネジメントが重要視されていることなど、さまざまな理由が考えられます。
1on1を導入する企業は年々増えているとも言われており、2022年にリクルートマネジメントソリューションズが行った調査では、従業員規模3,000名以上の企業では75%以上が1on1を施策として導入しているという結果が出ています。
1on1を導入するメリット、期待できる効果とは
・部下との信頼関係を構築する
部下との信頼関係構築は、1on1を導入する最も大きなメリットの一つといえます。定期的に1対1で話をする時間を設けることでコミュニケーションの量が増えるだけではなく、上司が部下の話を「聴く」姿勢を示すことで、仕事に対する考え方や悩みを共有できるようになります。時にはプライベートに関することを話したり、雑談をしたりする時間もあるかもしれません。中長期で適切に1on1を続けることで、部下は「自分を理解してくれる人がいる」と感じるようになり、お互いの信頼関係を築くことができるようになります。
・部下の自主的な成長を促し、育成する
人材育成も1on1の目的の一つです。1on1の特徴は、上司が部下に対して「指導する」のではなく、部下の話を上司が「聴く」こと。部下は将来の理想像や、それに向けた課題、その課題克服のために何をすべきかを、上司の質問に対して答えることで頭の中を整理できるようになります。上司から指示されるのではなく、自らやるべきことを言葉にすることで、自主的な成長を促すことが期待できます。
・部下を理解し、組織マネジメント力が向上する
部下と面談する時間を設けることで、トップとして部下に対する理解を深めることができるようになります。それぞれが仕事に対してどのような意識を持っているのか、何にやりがいを感じ、課題はどこにあるのか。それらを把握できるようになれば、例えば重要なプロジェクトに適切なアサインメントをしたり、その人の希望に沿った成長機会を提供したりできるようになります。また、定期的な実施によって、部下の変化も察知しやすくなります。「最近後ろ向きな発言が増えた」、「将来の目標をそもそも口にしなくなってきた」…などのサインをキャッチすることで、離職防止に向けた早めの対策を講じることもできるようになります。
・部下のモチベーションやパフォーマンスが上がる
頑張っても自分の仕事ぶりを会社は見てくれない、上司と信頼関係がない…そうした職場は、従業員の仕事に対するモチベーションを下げてしまう懸念があります。1on1を通じて、上司が従業員の現在の状況や将来の目標を把握し理解することで、そうした問題を解消し、働きやすい職場環境の構築や仕事のやりがいを創出することができます。質の高い1on1を続けることで、従業員のやる気を大きく向上させ、パフォーマンスを上げることが期待できます。
1on1の具体的なやり方、ステップ

CONTENTS
- 1.「準備」「実施」「振り返り」の3段階で成果を最大化
- 2.① 準備:目的を共有する
- 3.② 実施:基本は「聴く」姿勢で
- 4.③ 振り返り:記録をし、変化も確認
「準備」「実施」「振り返り」の3段階で成果を最大化
1on1は、単に面談の時間を定期的に設ければ成果を出すことができるものではありません。やり方に決まった定義はありませんが、効果を上げるための一例として、以下のステップをご紹介します。
① 準備:目的を共有する
まず重要なのは「なぜ1on1をするのか」を明確にすることです。1on1の主な目的は、企業が抱える課題を解決すること。離職者が増えているので定着率を上げたい、従業員の不満を察知し対策につなげたい、次世代のリーダー育成をしたい…課題の内容は、企業によってそれぞれです。何を目的に1on1を導入するのか、目的を共有してからスタートすることが大切です。
また、部下に対しても実施にあたって事前に説明をしておくことで、1on1をよりスムーズに進めやすくなります。「上司と1対1で話をする」というだけで、部下によっては身構えてしまったり不安を感じたりしてしまうかもしれません。指導や評価をするための場ではないこと、一人ひとりの成長支援のために行うこと、話したいことを自由に話して良い場であることを周知しておきましょう。
1on1は上司が話したいことを話すのではなく、部下がその日のテーマを決めることが一般的ですが、部下から話したい内容が出てこない場合に備えて、事前にアジェンダを用意しておくことも有効です。
② 実施:基本は「聴く」姿勢で
1on1は、基本的には部下が話したいことを聴く場であることを意識しましょう。部下が安心して話せるよう、遮らず、相手の言葉を受け止めながら「もう少し詳しく教えて」「そう思ったのはなぜ?」といった質問を重ね、部下が頭の中を整理し、現在の課題や解決に向けてやるべきことを自ら言葉にできるよう促します。この傾聴の姿勢が、1on1の基本となります。相手が何か悩みを抱えていると感じた場合でも、無理に聞き出すのではなく、話しやすい雰囲気を作ることを心がけましょう。
③ 振り返り:記録をし、変化も確認
1on1では、振り返りも重要です。期初に話した目標に向けて進捗しているかを1ヵ月ごとに確認したり、前の回で相談された困りごとがどうなったかを聴いたり、定期的に行うからこそ把握できる変化をキャッチアップするようにしましょう。話した内容や約束事を簡潔に記録しておくことも重要です。時間切れになってしまい後日深堀りしたい事柄や、後から経過を確認すべき内容については、忘れないように印をつけるなど、メモの取り方を工夫すると、振り返りがしやすくなります。
部下と1on1をする際の注意点

CONTENTS
- 1.相手に対し、言って欲しいことを無理に誘導しない
- 2.無理のないスケジュールを組む
- 3.複数人で行う場合のレベルを合わせる
- 4.基本は聴く場だが、指導等が必要なこともある
相手に対し、言って欲しいことを無理に誘導しない
例えば、部下のパフォーマンスに不満を持っている場合や仕事の取り組み方に問題があると感じている場合、1on1を通じ、相手がその課題に気づいて自ら改善の必要性を認識してほしいと感じてしまいがちです。そうした際に1on1でやってしまうのが、質問の仕方を試行錯誤して、こちらが思う方向に沿った発言をなんとか相手から引き出そうとすることです。しかし、そのような1on1では、相手の素直な気持ちを引き出すことができません。また、「どういう問いかけをすれば意図する答えが返ってくるか」ということにばかり意識を向けると、相手の言葉を聞き逃してしまうこともあります。1on1の主役はあくまで部下であることを忘れないようにしましょう。
無理のないスケジュールを組む
「1回30分」とは言っても、部下が複数人いる場合など、1on1を継続して実施するのは時間的にも労力的にも負荷がかかります。時には急にはずせない予定が入り、時間をとれないことが出てくるかもしれません。しかし、時間の変更や1on1実施のスキップを頻繁にすると、相手は「上司にとって自分の成長は重要ではない」と感じ、信頼関係を損ねてしまいます。あらかじめ無理のないスケジュールを組み、余裕をもって取り組めるようにしましょう。
複数人で行う場合のレベルを合わせる
全社的に1on1を導入する際に重要なのは、目的や実施方法、注意点などについて、上司の側でレベル合わせをしておくことです。実施する人それぞれが独自のやり方をしてしまうと、企業全体として1on1による目的を達成することができません。研修などを計画し、実施する側のレベルを合わせることが大切です。
基本は聴く場だが、指導等が必要なこともある
1on1によくあるのが、「上司の側は絶対に指導をしてはいけないのか」という疑問です。もちろん、1on1をいつも上司が注意する場にしてしまわないよう注意は必要ですが、例えば明らかにチームに迷惑をかけている、企業の向かう方向性とずれた行動をしているなど、本人の成長のためにも、早急な改善が求められる場合には指導することも必要です。1on1はあくまで手段です。ルールにこだわりすぎるあまり、本来の目的を見失わないようにしましょう。
経営者と1on1

CONTENTS
- 1.コーチングと1on1の違い
- 2.経営者が部下に1on1をするケース
- 3.経営者自身が1on1を受けるケース
企業の管理職が部下に1on1を実施するだけではなく、経営者自身が経営幹部と1on1をすることも、企業の成長にとっては有効です。また、経営者自身が「受ける側」となる1on1も、経営者としての成長につながります。
経営者と1on1について、実施する側、受ける側、両面でプラスの効果が期待できるのが、エグゼクティブコーチングです。
コーチングと1on1の違い
最初に、コーチングと1on1の違いについて、整理します。いずれも1対1で対話する点から、コーチングと1on1は同じものと認識されがちです。実施する団体などによって細かな定義の違いがあるため、一概には言えませんが、ここでは一般的に考えられている違いについてご紹介します。
違いの一つに挙げられるのが、対象者。コーチングは明確な成長志向がある人、ポジティブな人を対象としており、その人本来が持つ答えを引き出しながら成長を促すコミュニケーションの手法です。対して1on1は、ポジティブな人に加えて、そもそも成長したいと考えていない人や不満を抱えた人など、ネガティブな人も対象となります。
また、コーチングは前述したようにコミュニケーション手法の一つなので、1on1の場において相手の言葉を引き出すためにコーチングの手法が用いられることもよくあります。1on1は企業によってさまざまな目的が設定されているので、1on1の場ではコーチングだけではなく、目的に応じてときにはティーチングが用いられることもあり得ます。
経営者が部下に1on1をするケース
経営者が直接部下を育成するということは、経営を補佐する「右腕」をつくることにもつながります。経営視点を醸成するという観点からも、経営者が部下と1on1をすることは、成長速度を上げ、大きなメリットがあると言えるでしょう。
1on1を効果的に実践するには高い傾聴力・質問力・自己理解が求められますが、日常の業務の中で磨くのは容易ではありません。1on1の質を高めるために、エグゼクティブコーチング(経営者を対象としたコーチング)を活用することが有効です。
また、1on1導入を経営課題解決のための1つの手段と捉え、エグゼクティブコーチングを通じて、1on1の目的の整理や実施した内容の振り返り、目的に対する進捗確認などを行うことも可能です。エグゼクティブコーチングで定期的に振り返りをすることで、企業としての1on1の質を高め、より大きな成果を得られるようになるでしょう。
経営者自身が1on1を受けるケース
経営者自身が1on1を受ける場合も、エグゼクティブコーチングは最適な選択肢と言えます。お伝えしたように、コーチングは成長意欲がある人、ポジティブな人に対してより大きな効果を発揮します。企業を率いる立場として高い視座を持ち、リーダーとして成長したいと考えている経営者にとって、エグゼクティブコーチングは心強い味方となるはずです。
また、経営者自身がコーチングを受け、自ら「聴かれる側」を経験することで、部下の気持ちを理解できるようになる、というメリットも考えられます。
部下に対して1on1をするだけではなく、自分自身がエグゼクティブコーチングを通じて1on1を受けることも検討してみるのはいかがでしょうか。
まとめ

1on1は単なる面談ではなく、企業が課題解決のために目的をもって行う経営戦略の一つといえます。
部下の声に耳を傾ける時間を意図的に作ることで、課題の早期発見・人材の定着・主体的な組織運営が実現します。
適切な手順を踏み、質の高い1on1を行い、企業の成長を促進させましょう。
社長の悩みには、社長専門のコーチングを。

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